観ていてとても不思議な感覚なる作品だった。
この作品の中の役者のセリフは、繋がっているようでいて、とりとめがない。
バラバラなようでいて、何となく繋がっている。。。
テンポもそれほど変化せず、何か同じような旋律がずっと流れている。
その流れ方が、まるでいつもなら意識していない、頭の中を流れる膨大な量の情報が、目の前で見える形で繰り広げられているようなそんな感じだった。
私たち人間は一日に5~6万回も思考していて、そのほとんどは意識していないといわれる。
そんなたくさんの無意識の思考が目の前に現れて、今現在だけでなく、普段は忘れてしまっている過去から、未来までのいろんな考えや思考が、ふわっと目の前に現れては消えていくようなそんな感覚だった。
だからなのだろうか、舞台と客席が逆転している事も、特に違和感がなく、自然なことのように感じた。
今回の「GOOD WAR」は三部作の集大成で、その根底にあるのが「死」なのだろう。
だから作品を観ていると「死」についても色んな考えが浮かんでくる。
私も幼いころから20代くらいまでは「死」というものを身近に感じていた気がする。
でも大人になった今の方が「死」がより近くなっているはずなのに、年を重ねるごとに「死」よりも「生」を意識する事が多くなった。
もしかすると生まれてからの時間が短い方が、つまり若い人間の方が「死」を身近に感じるのかもしれない。
そんなことを役者のセリフを聞きながら考えていた。
そしてきっと「死」と「生」も表裏一体なのと同じように、「戦争」と「平和」も常に一緒に存在するから、自分の立ち位置によって見え方が変わるのだろう。
「GOOD WAR」
和訳するなら「良い戦争」というのだろうか。
個人レベルで考えるなら、「戦争」と言うよりは「戦い」と言った方がしっくりくる。
「戦い」のイメージは、人を傷つけたり、ネガティブなイメージが多いが、「戦い」にはポジティブな面もあって、人間にとって、とても大事な部分を担っていると個人的には思っている。
例えば、日常の中のほんの些細な出来事で言えば、朝まだ眠っていたい自分と戦って起きるとか、怠けたい自分と戦って仕事や勉強をすることもそうだ。
私たちの体の中でも「戦い」は常に起こっていて、免疫細胞が細菌やウィルスと常に戦ってくれているからこそ、私たちの身体は元気で健康でいられる。
そして何か新しいものを作り出す時や新しい事を始める時も、私たちが人生をより良いものにする為にも、ある意味では今の自分や今の状況と戦っているといえるし、「挑戦」し続けることもまた、戦う気持ちがあるからこそできることだと思う。
「GOOD WAR」
色んな意味にとれる言葉だから、この作品はきっと観る人によって感じることも全く違うのだろう。
最近、ポジティブに生きる事や挑戦する事は、命を輝かせ続ける上で、とても大事なことだと思っていたので、このテーマはタイミング的にとても面白かった。
そして観終わった後、ちょっとした長い旅をした気分になった。
<ルサンチカ>
これからの活躍がとても楽しみだ。