TOKYO
PIPE DREAM
LAND
山﨑健太✖️ルサンチカ アフタートーク
Independence
河井:本日は皆さんありがとうございました。山﨑健太さんと本作のドラマトゥルク蒼乃まをさんとアフタートークを行なっていきます。よろしくお願いします。
山﨑:お願いします。
河井:簡単に概要だけご説明させていただきますと、本作はこれまでルサンチカがインタビューでコラージュしてきた作品の新作になっています。
今回出演者4名で御厨さん以外は出身が東京じゃない方。それぞれいろんな土地から出てきていて、その人たちと本作を作りました。僕自身も大阪出身なんですけれども、いかがでしたか?山﨑さん。
◼昔を思い出す、記憶に繋がる
山﨑:感想というか、感想って言われてもこれ結構難しいなと思うんで、観ながら考えたこと、というか全然関係なさそうな話から入るんですけど。
僕、大学生の頃バンドをやっていて、そのバンドでくるりの『東京』っていう曲を歌ったのを急に思い出したの。もう20年ぐらい前なので思い返すこともなかったんですけど、観ていて急に思い出して。東京で何とかやってますみたいな感じの歌なんですけど、でも僕、東京生まれで、住んでるのはそれこそ東京ディズニーランドのある浦安市っていうところで上京みたいなことは一切なく、中学からもう都内の中学高校大学に通ってたので、東京は生活圏といえば生活圏だったので。だから「『東京』」を歌うんですけど、東京に出てきて何とかやってますみたいな感じは一切実感がなかったなっていうのを観ながら思い出してて。
そこではたと思い当たったのは、大学の時、周りにいた人たちは上京してきた人たちも結構多くて、よく考えるとバンドのメンバーはみんな東京以外の出身だったんです。なぜそれで俺が歌ってたんだろうみたいなこと、なんか急に思い当たって。そういう「思い出す」みたいなことが観ながら起きていました。
河井:ありがとうございます。当初、開場中の曲を全部「東京」って冠している曲にしてみようと思っていて、それこそくるりもそうだし、銀杏BOYZもそうだし、サザンもあるし。「東京」って本当にタイトルになってるんだなあと。みんな東京に何かを持ってるんだなってすごい思っちゃった。で、この会場で実際に流してみたら、すごく東京臭いっていうか、東京を夢見てるぜ!みたいな感覚になったんでやめました。
山﨑:ディズニーランドもあまりにもなじみがある場所で、小学校のときから友達と親抜きで行ったりしてたぐらいの距離感だったので、なんかその懐かしさみたいなのが結構すごかった。
東京に出て頑張ってます、みたいな曲はいっぱいあるじゃないですか。でも僕にとってはむしろそれ自体が、そういうお話が、フィクションの世界の出来事みたいなものなの。
で、そのフィクションを、今日舞台上にいる人たちが語ってるな、みたいな感じで観てた。
だからやっぱり上京っていうことをしてるかどうかでまず見え方というか、どっち側にっていうのが変わってくるかなと思うんですけど。
そういうことを結構最初の方でそれを考えてたんですけど、でも冷静に考えるとというか、しばらく観ていると、あんまり東京の話でもないんだって思ったんですよ。「TOKYO PIPE DREAM LAND」って言われていたから東京の話だっていうふうに見ちゃってたけど、あんまり東京の話はないというか、明らかに東京だとわかる話は少なくて。特に前半はそんなに多くないじゃないですか。
後半は東京に急にフォーカスがあたって、それで ふって不意に終わるっていう感じだったような気がするんですけど。だから聞きたかったのは、どういうインタビューが行われたのか。僕、前にもルサンチカのインタビューの作品を観たんですけど、その時は、色んな人の言葉を、その言葉を元々発した人じゃない人が喋るみたいな形式で、しかも何か演じるとかいうのでもなく、ただその言葉を発するみたいなふうに見えてたので、今日はそれとは結構印象が違っていた。そのあたりの変化みたいなことを聞きたいなって思います。
◼インタビューについて
蒼乃:そうですね、今回のセリフはほとんどその言葉を話した本人が喋っています。でも、クリエイションの現場にいた出演者以外の言葉が多少は混ざっているので、完全にその人の言葉ですっていうわけでもない。
本人が喋った言葉も、いろんな質問に対する回答を一つの文章にコラージュしてるので、完全にその人本来の言葉かって言われるとやっぱり違う。でも、セリフ自体はほとんどその人が喋った言葉になってます。
河井:質問内容は当日パンフレットに載せてあるんですけど、ほとんどがそれです。例えば「理想の死に方」はもちろん、「理想の生活」「理想の1日」「現実の1日」「東京には何がありましたか/何がなかったですか」など。
パンフレットに載せている質問を元にしつつ、インタビューを進めるとそれぞれの話から派生して質問が増えていく。御厨亮さんは元々東京出身で、東京っていう街がそんなに好きじゃないっていう部分と、でも人がいなくなる年末は好きだみたいな話をしたりして。そういったようなことをお喋りしながら作ったっていう形ですね。「東京来たばっかりだからわからない、これからいろんな人に会ってみたいです」って言って、自分でインタビューしに行ってくれた人もいました。
「ユートピアはどんなとこですか」って聞くと、自分の理想だからこだわりが出てきてユートピアを共有できなかったりしたんですよね、出演者間で。じゃあ、みんなが共有できるユートピアはどんなところですかっていうふうになっていく。そのときに「東京ってみんな居れていいよね」っていう回答が返ってきたり。
便宜上「田舎」って言いますけど、田舎から来た人たちは、「何やっても許されるよね、東京は」って言う。地元だったら、ショッピングモールしか行くところがない、そこに家族と行ったり、デートしに行くと絶対誰かに会う、それはすごく嫌だ、行きたくない、みたいなことがある。けれど東京だと、自分が急に匿名になる。隣の家の人が誰かなんか気にしないし、それこそ自分が何やっても、選んでも許されるっていう感覚があるっていうとこから始まった。
今回の出演者の多数が何でか、ちょっと暗いというか、人と会いたくないっていうのが結構願望にあって。だからユートピアには私しかいないとか、周りに人がいないみたいな解答が多かった。だからまずユートピア像を語ってもらって、東京に「TOKYO PIPE DREAM LAND」があったらどんなところ?みたいにインタビューを続けていった。
蒼乃:東京って言ったら夢を追っていく場所っていうイメージはあるじゃないですか。私も千葉出身なんですけど、別に通えるからそういう感覚はないんですよね。なのに何故か、東京にいる人は夢を追ってきてるから東京にいる人にインタビューしたら夢の話を聞けるって思い込んでた。実際インタビューしてみたら、「いや何となく来ました」とか「なんか流れで来ました」とか、そもそも「東京生まれ育ちです」みたいな。東京の話をしたら自動的に夢の話になると思ってたんですけど、そうじゃない人の方がどうやら多いぞっていうことに、制作途中で気づいたんです。
じゃあ「今の夢の話」をしてもらおうとか「理想」の話を聞こうっていうところで、「ユートピア」っていうのが出てきた。だから東京感が少ないのはそういうところに理由があるのかもしれないと思いました。
山﨑:ユートピアが似てる。これも観ていたときに思ってたことなんですけど、出演者はそれぞれ別の人とはいえやっぱり俳優という点は共通しているなわけじゃないですか。演劇って人と関わらないと作れないので、それ以外の時間は1人になっちゃうのって、僕も作品を作るので、そんなにずっと一緒にいると疲れるなみたいな気持ちはすごいわかる。何かそういうことかなって思った。あと観ていて思ったのは、さっき、東京だと何でも許されるって言ってたし、その匿名性みたいなこともはわかることである一方、舞台上に乗っている4人の言葉っていうのが、やっぱり性質が似てる部分が多くて。なんかしばらく見てると、ここにないものに想像が行ったんですね。話の感じだと全員独身だし、ぱっと見のジェンダーとしては少なくともこの作品のなかでは男性以外のジェンダーの話がされている場面というのは明確にはなかったと思います。で、やっぱり性質が偏っているので、出てくる話もそうすると似てくる。だから一人暮らしの生活の話はあったけれども家族との生活の話みたいなのは出てこないし、なんか子育てとかも出てこないしみたいなことが結構気になりました。その辺りはどう?
河井:もう単純に、今回は出演者の言葉だけでやろうと思ってたんです。言ってしまえば4人の披露をするっていうとこから進めたいなと思っていて。僕も制作途中に子供の話とかな家族の話ないなとか思ったりしたんだけれども、でもそれはなんかちょっと違うなって思っちゃって、この人たちにそれを課すことが。
山﨑:こちらとしても観ていてあの人たちにそういう話を喋ってほしいと思ったわけではないんですけどねは別に思わなかったんだけど。多分出演者ありきでこの作品は始まってるわけじゃないですか。だったら最初その時点でもう少しいろいろな話が出てくるように出演者を考えるという入れるっていう選択肢もあったんじゃないかと思った。
河井:そうですよね。そう思います、僕も。
山﨑:多分年齢も結構近いんじゃないかなと思って。
河井:近いです。作品を、最終的には10人20人ぐらいで、やりたいと思っていて。もっといろんな人が入ってきたら、またそれこそ変わるし、語られることも変わるよな、それで見えてくる像っていうか、それを10人20人で共有して立ち上げることができたら、もっといろんな話ができるなと思っています。とはいえ自主企画でやるのにも限界があるのも現状です。
◼それぞれの「東京」
蒼乃:東京の話をやるぞ!ってなったときに、この4人を選んだのではなく、この4人で作品やりたい、それなら今は東京の話してみたいってなっていった。そういう風に始まった。だからインタビューしてみて、そういえば家族との生活が無いなってなったときに、そこに物や誰かを追加で出すっていうことは、今回選択しなかった。偏りが生まれてるのはそこがあると思います。
山﨑:なるほど。めっちゃかわいい舞台美術で、あのバランスっていうのがややギャップがあるってところが。
河井:ははは。
山﨑:でも、それは面白かった、どっちかっていうと。
河井:出演者のみんなにも言われたんですけど、河井は暗いって言われて。僕、「理想の死に方」も暗い話だと思ってない。「理想の死に方」を聞くことがそもそも「希望」みたいなところがあるから。「日々を生活する」っていうことだから。なるべく暗くしないようにって思っているんですけど、が何故か暗いと。今回、人生で一番明るくしようと思ってやったんですけど。
山﨑:照明と舞台美術はなんか明るい(笑)。特に前半は観念的な話が多かったなと思って。しばらくは聞いていても何の話なのかよくわからない。、そのことと作品の暗さみたいなこと、例えば中條さんが何か日記みたいなのを喋るところで急激に生活が立ち上がっていくことになってたと思うんだけど、そういう生活の具体的な話じゃなくて、抽象的なに、それが夢なのかどうかはわからないけど、そういう観念的な話になっていくみたいなところまで含めて、何か今回の4人のバランスだったのかなっていう。
河井:そうですね。理想、現実、ないもの、あるもの、っていうふうに連鎖的にテキストはなってたと思います。
蒼乃:明確にここのことを喋っていないなみたいなぽやっとした解答が多いのは、多分ユートピアの話とか、想像の話だから。想像の話するときに、毎日ご飯食べて洗濯して掃除してっていうリアルな想像をする人があんまりいなくって。美味しいものがあるとか、したいことができるっていう話にどうしてもなっていった。それが、1日をどう過ごすか教えてくださいって言うと、急に現実味が増すんです。朝起きて顔洗ってとか、犬起こしてエサあげてとかっていう。
山﨑:なるほどね。何か今の聞いてて、作中に質問自体をも出してきてもよかったのではと思う。具体的な質問をしてるのに抽象的なことしか出てこないみたいなバランスも見えても、面白かったんじゃないかなとっていうのはすごい思いました。
河井:ありがとうございます。
蒼乃:ありがとうございます。これまで作ってたインタビュー作品は割と出演者が質問していたんですけど、今回はパンフレットでどんな質問が何に当てはまるか想像してもらえたらなっていうところもありました。
河井:ごめんなさい、もうちょっとたくさんお喋りしたいことあったんですけれども、今日はここまでで。お話ありがとうございました
山﨑:ありがとうございました。
日時・会場
2023年11月13日(月)〜11月19日(日)全6回
アトリエ春風舎
所在地:〒173-0036 東京都板橋区向原2-22-17すぺいすしょう向原B1
アクセス:東京メトロ有楽町線・副都心線/西武有楽町線「小竹向原駅」下車 4番出口より徒歩4分
・11月13日(月) 19:30★
・11月14日(火) 19:30
・11月15日(水) 休演日
・11月16日(木) 19:30★
・11月17日(金) 14:00
・11月18日(土) 16:00
・11月19日(日) 14:00
Mail|ressenchka@gmail.com
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